わらびの日誌

please forget me not, but I'll forget you. so it goes.

雫井脩介『クローズド・ノート』

雫井脩介クローズド・ノート

――葉菜ちゃんよ、どうか幸せでいて。
クローズド・ノート (角川文庫)

クローズド・ノート (角川文庫)

 

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 『クローズド・ノート』の本題は主人公・香恵が住むアパートの部屋に置き去りにされている以前の住人のノート「伊吹’s note」にまつわることなのだけれど、どうも葉菜ちゃんのことが気になってしまいます。葉菜ちゃんは大学のマンドリンサークルのときも暇なときも香恵と一緒にいるお友達です。

 さて、葉菜ちゃんには鹿島さんという彼氏がいます。鹿島さんは企業家を目指す若者たちのために勉強会をひらいたり、IT企業の国際的な情報交換や人材交流をサポートする仕事をしたりしているデキる男です。白のタイトパンツを着こなします。しかしこの男、葉菜ちゃんがアメリカに留学してからどうもおかしい。葉菜ちゃんに連絡をよこさないのです。しかも、アルバイト中の香恵にわざわざ会いに行って香恵の電話番号を聞き出そうとしたり、食事に誘ったり……なんということでしょう。香恵にモーションをかけているではありませんか! そして香恵との食事中に〈「香恵ちゃんと出会った」〉なんてキザな愛の告白をします。葉菜ちゃんには葉菜ちゃんの魅力があるけれど、すべてに背伸びしているようなところが見ていて痛々しい。私には無理とあっさり言ってしまえるひと、つまり香恵のような子のほうがほっとできる。それが鹿島さんの言い分のようです。

 葉菜ちゃん、ほんとうに鹿島さんでいいの? わたしにはあなたが鹿島さんに見下されているように見えるのです。あなたに対して背伸びということばをつかうのは、あなたが努力したって努力した先のゴールにはたどりつかないのによくそんな努力するよなあ、と否定しているということだし、あなたの友達にもすぐに弱音吐くところがいいなんて失礼な発言をしています。

 こんな男となどいますぐに別れてしまえと思うのですが、葉菜ちゃんは鹿島さんと別れないどころか鹿島さんが今度アメリカにくると言って喜びます。

 恋は盲目です。

 また、ほかの女のひとの肩を抱いているというのに。