わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

So you don't have to worry, worry!!

今週のお題「これ、うちのおかんだけ?」

 家に帰ると、母が花の水やりをしていた。そして、おかえりに続けて言う。「なあなあ、おかあさんのケータイなんかあった? 電源入らへんようになってんけど」

 ことしの3月、御年53歳の母は携帯電話をはじめて購入した。簡単ケータイで、ぱかぱかするやつである(さいきんの簡単ケータイスマートフォン型もあるのだけれど、母はガラケー型を選んだようだ)。春からはじめたパートの仕事中に連絡を取りあわなければならないらしくて、「ケータイなんていらん!」と主張しつづけていた母もついに携帯電話を持つことになったのだった。ちなみに家用と持ち運び用でひとり2台ずつパソコンを持っているような家族だけれど、母だけはパソコンを持っていない。じゃあ機械が苦手なのかというとそういうことでもなくって、テレビの配線も上手にやるし、DVDデッキには歌番組やアニメのオープニング・エンディング部分を編集したものがたくさん入っていて、それを聞きながら家事をしている。おかげでいつかの母の誕生日に気まぐれでプレゼントしたユーミンのCDの出番はあんまりない。

 家に入って母の携帯電話を見てみると、たしかに外がわの時間表示が消えていて、なかのホーム画面も真っ暗だった。電源ボタンを長押ししてもうんともすんともいわない。充電器を差しても駄目だ。「な、あかんやろ?」と困った表情で母が言う。

 こういうときどうするんやっけ、と考えて、そういえばバッテリーをはめなおすというのをやっていなかったので試してみることにした。裏がわの蓋をはずしてバッテリーを抜いて、またはめる。すると、当たりだったみたいで、電源ボタンを長押しすると画面がついた。直ったでと言うと「なんで?」と聞き返され、バッテリーはめなおしたら直ったと言うと「なんで?」とまた聞き返された。ケータイってそういうもんなんやってと言っても、「なんで?」、「なんで?」と何度も聞かれてこんどはわたしが困ってしまった。テレビを叩いたら直るみたいなのよりはちゃんとした理由だとおもうのだけれど、化学系の理系の母には通用しないのだった(関係ないけれど、そんじょそこらのメントールも母には通用しない。お菓子会社の試作室で働いていたときにほぼ原液のメントールを舐めてハードなスースーを味わっていたからだ)。

 パートに持っていくん忘れたからすねたんや、という理由で母とわたしは携帯電話の電源が入らない事件の幕をとじておくことにした。ホーム画面の〈3: エヴァ〉ってなに? エヴァンゲリオン? と聞くと、「パート先の略称やで」と教えてくれた。

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