わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

人生でわりと踏まないもの

今週のお題「ゾクッとする話」

 お風呂からあがってリビングに戻ってきたとき、右足でなにかを踏んで跳びあがった。生ぬるくて、ぱりっという音がした。飼い猫が毛玉を吐いた跡ならよく踏んでしまうのだけれど、それにしては水分が少ないし、固形物らしい。もしかしたら、猫が追いかけまわして仕留めたゴキブリの死骸かもしれない。踏んでしまったものを見るのが怖くて、視線を天井にむけながらいつもすわっている座椅子まで歩いた。右足の裏がべとべとする。

 しかし、踏んだものを放置していてはまた踏んでしまうだろうし、家のひとたちも困るだろうから、なんだったのか確かめて片づけておかないといけない。足の裏を拭いて、なにかを踏んだあたりに近づく。そして、勇気をふりしぼって床を見た。ゴキブリの死骸ではなかった。けれどもなんなのかよくわからない。黒くて長細い。骨がある。見たことがあるような気がした。いや、きょうの晩ごはんのときに見ている。

 さんまの塩焼きだ。

 なんでこんなところにさんまの塩焼きが落ちているのだろうと疑問におもいつつ、とりあえずさんまの塩焼きを拾って、台所のお皿に置いた。

 髪にドライヤーを当てていたら、台所からさんまの塩焼きが落ちるのが見えた。ドライヤーをとめてすぐにキッチンにむかうと、猫があわてて台所から降りてきた。どうやら猫がさんまの塩焼きにありつこうとして床に落としていたらしい。わたしはもう一度さんまの塩焼きを拾って皿に置き、今度はレンジのなかに入れた。猫はレンジをあけられないから、これでもう安心だろう。

 いまでも晩ごはんが焼き魚だった日には台所の近くに魚の残骸が落ちていることがある。猫が恨めしそうな顔をしているのを横目に見つつ、わたしは魚の残骸をレンジに入れて猫に奪われないようにする。

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