わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

strawberries on the cake

今週のお題「一番古い記憶」

 家庭科の授業でクレープをつくったときに、どうしてもいちごが苦手だからわたしの分にはのせないでほしいと班のひとにお願いしたら、「いちご食べられへんとか人生の半分損してるやん」なんて言われてしまった。もちろんいちごを食べなくても生きていけるし、いままでも生きてきたけれど、飾りのフルーツがなにものっていないチョコレート一色の誕生日ケーキを見ると、たしかに損しているかもしれないなあとおもう。母によると、3歳か4歳のころからケーキにのっているいちごを避けるようになったらしい。苦手になったきっかけは覚えていない。けれども、いちごを食べようとした記憶は残っていた。

 その日のわたしはおでかけ用のワンピースを着て、ぴかぴかの革靴をはいて、高級そうな建物のなかにいた。外観はおもいだせないけれど、赤い絨毯がしきつめられていたとおもう。せいいっぱい腕を伸ばして、部屋の扉をあける。部屋の真ん中にはテーブルがあって、おなじくおでかけ用の服を着ている兄が椅子にすわっている。わたしはテーブルに近づく。テーブルにはいちごのショートケーキが置いてある。椅子によじのぼって、まだ切りわけられていないショートケーキに手をのばして、いちごをつかもうとした。
 それ以来、きょうは意識があるのだな、目が覚めているのだな、と生きている自覚を持つようになったから、たぶんこれがはじめての記憶だ。じぶんがいちごを食べようとしていたなんて信じられなくって、赤い絨毯がしきつめられている建物も現実味がなかったから夢だったのではないかともおもうのだけれど、母にきいてみるとヨシタカおじちゃんの結婚式の日かもしれないという。そういわれると、あの場所は結婚式の会場だったのかもしれないとおもえてくるのだった。
 もうすぐ誕生日がくる。相変わらずいちごは食べられそうにないので、ことしも人生を半分損しながらシンプルなチョコレートケーキを食べるのだろう。ガトーショコラがいいなとおもう。きょねん食べたアンテノールのケーキはとてもおいしかったからまた食べたい。
 いちごのショートケーキが大好きな兄は、歳を重ねるごとにヨシタカおじちゃんそっくりになっていく。

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