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わらびの日誌

please forget me not, but I'll forget you. so it goes.

祖母のこと

今週のお題「結婚を決めた理由」

 両親が一緒にならなかったら、23年前のきょう、わたしは生まれていなかったのだけれど、娘という視点からみても母は誰かと家庭をつくるようなひとにみえない。とてもめんどうくさがりなので家事が嫌で、長い時間ひととおなじ空間にいるのもそれほど好きではない。とくに赤の他人と接するのが駄目らしくて、ともだちが家にくると告げると母はげんなりしたものだった。このような母が結婚しようとおもいたったのは、「仕事もたのしかったし、貯金もいっぱいしてひとりで生きていってもよかったけど、なんかめんどうくさいこともしてみよかなっておもってしまったんやもん」といったことだったらしい。しっくりこない事情だ。

 結婚するには相手が必要で、これといって恋愛感情もない母はお見合いで結婚相手を探した。どれくらいお見合いをしたのかは知らないけれど、あるとき父とお見合いすることになった。特別格好良いわけでもなく、むしろめんどうくさそうなひとだとおもったという。父の父、わたしの祖父にいたってはとてもめんどうくさそうなひとだと感じていて、はじめて会った時点で嫌いになってしまった。けれども、父の母、わたしの祖母にあたるひとには違う印象を受けたという。「ほんわか、おっとり、って感じのひとやった」と母は言っていた。めんどうくさがりの母にとって結婚でいちばんめんどうくさいのは嫁姑問題だった。だから、母は夫ではなく姑を選び、父ではなく祖母に惚れたのだった。母にとってほんわか・おっとりの祖母は喧嘩したりしない相手で、一緒にいるのが心地よかったのだとおもう。

 こうして母は父と結婚した。結婚式を挙げたあと、新婚旅行でハワイに行っているあいだに祖母が亡くなって、時差ぼけであたまがぼんやりしたまま葬式の日をむかえた。一気に冠婚葬祭をこなしたあとに残されたのはめんどうくさい父ととてもめんどうくさい祖父で、母の結婚生活はだいたいがめんどうくさいものになった。

 できることなら母が好きになるような祖母に会ってみたかった。そういえば、仏壇に写真が飾ってあったことがないから祖母の顔を知らない。けれど、夜中にリビングでぼんやりしていたら祖母の幽霊が出たと勘違いされたり、母方の実家で「むこうの奥さんによう似てきたなあ」と言われたりするので、わたしは祖母にとても似ていて、祖母はわたしみたいな顔をしていたのだろう。

 恋人からメールがきた。そろそろ夕食に出かけようとおもう。

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