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わらびの日誌

please forget me not, but I'll forget you. so it goes.

過去編・未来編

今週のお題「行ってみたい時代」

 キュウリのおばちゃんに連れられて公園をあとにした。炎天下の公園にはすずめすらいなかった。光化学スモッグ注意報が出ていた。それでも、リョウタくんがくるかもしれないからずっと待っていたかった。マンションのエントランスから公園のほうをふりかえって、リョウタくんとすれ違いにならないことをただ祈った。

 じぶんからほしいと言ったのか、それとも母がなんとなく買ってきたのかは覚えていないのだけれど、幼稚園児のころは「サンリオタイムネット」というゲームが好きでよく遊んでいた。ある日、主人公のパソコンに一通のメールが届く。メールには見知らぬ老人の姿がうつっていて、過去と未来に引き裂かれてしまったタイムネットの世界を救ってほしいと言う。主人公は老人の願いを聞きいれて、タイムネットの時間の流れをつかさどる〈時の柱〉を修復することになった。ストーリーは壮大なのだけれど、〈時のかけら〉であるモンスターを捕まえて、育てて、ちからくらべを挑まれたらバトルするといったところがポケモンとよく似ていた。当時、幼稚園のともだちでポケモンをやっている子はちらほらいたけれど、「サンリオタイムネット」をやっている子なんて聞いたことがなかった。だから、幼稚園バスでリョウタくんが手すりをぎゅっとにぎりしめながら「サンリオタイムネット」のモンスターの名前をぶつぶつと唱えていることに気づいたとき、とてもおどろいたのだった。わたしもそのゲームやってるよと言ったら、リョウタくんもおどろいていた。家が近所だったのもあって、記憶にないところでわたしたちはゲームを見せあいっこするために公園で会う約束をした。

 あのあと、リョウタくんは公園で待ちぼうけになっていなかっただろうか。「サンリオタイムネット」はクリアすると過去編では未来、未来編では過去でしか行動できなくなってしまう。そういえばリョウタくんが持っていたのは未来編で、わたしが持っていたのは過去編だったから、あの日会えなかったのはそういう運命がはたらいていたのかもしれなかった。どうしてもタイムマシーンをつかって過去にいかなければいけなくなったら、あの日リョウタくんがどうすごしていたのかを見にいこうとおもう。

 「サンリオタイムネット」に出てきたパソコンも、メールも、デジカメも、未来の産物だとおもっていたのにぜんぶ手元にある。それでも、キュウリのおばちゃんのほんとうの名前はおもいだせそうになくって、それどころか、忘れていくばかりのような気がした。

サンリオタイムネット 過去編

サンリオタイムネット 過去編

 

 

サンリオタイムネット 未来編

サンリオタイムネット 未来編