帰ってこない彼/忘れたくない彼女
今週のお題「今年見に行ってよかったもの」
冬はきらいです、なんて言ってしまったけれど、冬が特別恨めしいとはおもっていない。
用事をおえて、ふらっと映画館に寄った。CMで見たときから『リトルプリンス 星の王子さまと私』が気になっていて、ちょうど映画が1000円の日だったから行ってみることにしたのだった(『星の王子さま』の物語自体も好きなのだけれど、『夜間飛行』を書いたサン=テグジュペリが『星の王子さま』を書いたこと、偵察機で飛びたったまま帰還しなかったという彼自身の最期もふくめて『星の王子さま』が好きだった)。
前寄りの列のはしっこの席にすわる。レイトショーはひとが少ない。ところどころにカップルとかともだちづれとかがすわっている。このひとたちも〈いちばんたいせつなことは、目に見えな〉くなるまでのプロセスをすごしてるんやろうか、とおもう。上映前に松任谷由実さんの「気づかず過ぎた初恋」が流れていて、まだはじまってもいないのに泣いてしまいそうだった。
映画は、主人公のおんなのこがこども時代を忘れてしまうことと隣の家のおじいさんに会えなくなってしまうことを恐れているのが印象的だった。きっと、日常生活に寂しさがあって彼女は悲しいことを言うのだろう。彼女の生活は勉強ばかりだった。
大切なものは目に見えないようで見えていて、でもやっぱり見えていなくって、いっそのこと見えてしまえばいいのにとおもう。すくなくともわたしは鈍感で、超能力も使えないから、大切なものもよくわかっていない。黙っててもわかってよなんて、ことばにしないことに甘えたくないのだ。好きなひとには好きと言いたいし、会いたいひとには会いたいと言いたい。
冬のはじめの夜の空気は心地良い。ほんのすこしの距離ならポケットに手をつっこんで歩くのが良い。雪が降りはじめたら嫌になってしまうだろうから、それまでは冬を好きでいようとおもう。