わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

ハロー

今週のお題「私がブログを書く理由」

TRIPS!④ハロー

 ひと月まえはまだ寒かったはずなのに、もう冬の温度を忘れている。4月下旬、京都は28度をこえたらしくって、春も初夏も通りこして夏がやってきてしまった。髪のなかに熱がこもるみたいで暑くてしかたがなかった。ようやく改装をおえたショッピングモールの薬局で、マスカラと、制汗剤と、洗顔料と、洗い流すボディクリームを買った。まつげは長いほうがいいし、からだは汗のにおいがしないほうがいいし、顔は洗ったほうがいいし、肌はすべすべのほうがいいし、それくらいの理由で買いものをした。揚げもの屋さんでカニクリームコロッケをふたつ買ったのも、晩ごはんのおかずにしようというくらいの理由しかなかった。駐輪場で虫にまとわりつかれて、眉毛が生えているところが痒くなって、それから右の頬が痒くなった。蚊にかまれたのだった。春も初夏も通りこして夏がやってきてしまった、とますますおもう。あとで恋人に顔をみてもらったらやはり虫にさされたときの腫れができていて、寝ぼけててチークこんなとこに塗ってしまってんって感じやで、と言われた。やたらと化粧のはなしをする時期があったせいか、このひとは頬にぬる化粧品のことをチークだと知っている。ひとえまぶたのひとが極太のアイラインを引いてもまぶたが重なって隠れてしまう、ということは話したことがなかったから知らなかったみたいだった。恋人がうどんをゆでてくれる。けさ読んだ『君と僕。』をおもいだす。

〈ゆらゆら/背中丸めてごはん食べて…猫みたいだな/湯気で目がうるんで…/ゆらゆら/なんか悠太が/悠太が泣いてるみたい…〉

 食卓に、きつねうどんと、えびの天ぷらとちくわの天ぷらと、カニクリームコロッケがならぶ。このひとのせいでうどんに七味唐辛子をかける癖がついてしまって、どぼどぼ入らないように、どぼどぼ入らないようにと祈りながらふりかける。テレビで天気予報を見る。あしたは雨らしい。恋人はテレビで天気予報を見たばかりなのに、スマートフォンで3連休の天気を調べる。どこかにでかけよう、と言って、どこかが決まらないままおひらきになった。やらないといけないことをひとつずつこなしつつ、赤いするするとした服をきたおんなのひとがおとこのひとに迫っている写真が気になって、恋人に写真を教えた。その写真は『蜜のあわれ』という映画のオマージュで、急にその映画が見たくなって、調べているうちに京都ではあしたで上映がおわってしまうことに気づいて、ただ残念で、しかも室生犀星が原作だと知って、ますます残念がることになってしまった。室生犀星といえば「ボリス・ヴィアンの『うたかたの日々』がすきならきっと室生犀星もすきだよ」と先生にすすめられたことがあったのだった。まだ読んでいないから、東京に行くまえか、東京に行ったときにでも本を買おうとおもう。映画といえば名探偵コナンを見にいくのもいいなとおもって、3連休は映画館にいくことになった。そのあいだに黒猫が部屋を出たり入ったりして、いろいろなところにあたまをすりつけていた。

 そしてわたしはきょうという日を忘れるのだけれど、いま書いたことによってすこしは記憶がたもたれるのです! こんなことを書いたのかと驚くある一日までわたしは歩むのだろうし、ある一日をむかえたらひとつひとつ本のページをめくるように文章のなかで過去を旅するのでしょう。いまは岡本仁志の「It's only love」をくりかえしきいている。

〈そうなんだ/予報外れの雨のような/涙流すんだな/What can I do./It's only love.〉

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