わらびの日誌

please forget me not, but I'll forget you. so it goes.

わたくし、本日なまけもの。

今週のお題「わたしの一足」

TRIPS!⑦わたくし、本日なまけもの。

 「ローファーってなまけものっていう意味なんやって」と部活中に先輩が言った。そのとき先輩は新書を読んでいて、どうやらその本に書いてあったらしかった。ひもを結ぶ必要がなくって、手をつかわずにずぽっと履けるから、ローファーはなまけものの靴なのだそうだ。

 なまけものの靴はほかにもあるとおもっていて、たとえば、見た目はひも靴だけれど側面にチャックがついている靴とか、履き口がやわらかいブーティとか、ベルトなどをとめる必要がないサンダルとかがそれにあたる。さあ出かけようというときにさっと履いて玄関を出られる靴はなまけもの度が高くってたいへん好ましい。ひらひら・ふりふりの服に合わせやすい質感だったり、派手な色でその靴さえ履いていればなっておしゃれに見えたりするとさらに良い。逆に、履くのに時間がかかったり、歩いているうちに装飾などがずれてしまう靴はめんどうくさくなってしまって履かなくなってしまう。靴につかうお金は1年間で1万円までと決めているから、履かなくなる靴、というのはなんとしてでも避けたい。それでも、油断して履かなくなるような靴をつい買ってしまうことがある。Sサイズで3000円以内であればちょっぴりかかとが高くても購入する。そしていざその靴を履いて家を出ると、まだ数歩しか歩いていないのによろめいて足をくじいてしまう。かかとが高い靴を履いて歩くのがすこぶるへたくそなのである。おまけに無計画にとめどなく歩くのがすきなのでかかとが高い靴は足がすぐに疲れてしまってしっくりこなかった。おんなのこなんやしちょっとずつかかとが高い靴を履く練習もせなな、と母に言われていたけれど、けっきょく練習しないまま23歳になっていた。おかげで就職活動のときにはパンプスでぱたぱた音を鳴らしながら歩くことになって我ながら静かに歩けなくってみっともなかった(そういえば、学生のころにオープンキャンパスのスタッフをしていたら真っ赤なパンプスを履いたおんなのこがとてもきれいに、音をたてずに歩いていて、きっとどこかご令嬢なんやろうなとみんなでこそこそ話したことがある。ただ美しく歩くだけで女子はみなご令嬢になれる)。

 そうしてわたしのもとに集まったのは、インヒールのチャックつきデニムスニーカー、山吹色のブーティ、靴底がスニーカーみたいになっているグレージュのパンプス、ベージュのレインブーツ、無難な感じの茶色いサンダルと、みんななまけものでかかとがフラットな靴だ。パーティードレスにあわせる靴もすこしおしゃれめなローファーを選んだ。かかとが高いほうが足がきれいにみえるのだろうなとおもいつつ、ピアノの発表会で会場設営したりペダルを踏んだりすることを考えるとやはり底がひらたいほうがいい。美しさよりも機能性を求めてしまう癖があるらしい。

 数年前、高校のともだちが先輩とばったり会ったと言っていた。ふつうにOLやってるよ、とのことだ。高校の制服を着てローファーを履いていた先輩は、いまごろスーツを着てパンプスを履いている。高校生のころの先輩しか知らないから想像がつかないのだけれど、スーツとパンプスというだけでおとなっぽくって、なんだか遠く感じる。これが、おとなになるということなのだろうか。

 つぎに会える日がきたとき、先輩はどんな靴を履いてやってくるのだろう。

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