読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

わらびの日誌

please forget me not, but I'll forget you. so it goes.

もしもあなたを愛したら

今週のお題「私のタラレバ」

 はじめて覚えた英語は「この星に生まれて」という合唱曲に出てくる〈Dreams come true together〉で、二番めに覚えた英語は名木田恵子の『星のかけら』に出てくる「If I loved you」だった。主人公・真記の幼なじみである牧人の母親が歩道橋のうえでうたうのだ。「If I loved you」は『回転木馬』というミュージカルの曲らしくて、もしもあなたを愛したら、あなたに知ってほしい想いの丈を何度も何度も言おうとするでしょう、もしもあなたを愛したら、うまくことばが出てこなくて堂々巡りしてしまうんでしょう、といった歌らしい。

www.youtube.com

 「If I loved you」ってどんな曲だったっけとときどきおもうことがあって、何度かYouTubeで聞いていたせいか、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』でキャシーが枕を抱きしめながら「Never let me go」を歌うシーンを読んだときに想像したメロディーは「If I loved you」のものだった。けれども実際はぜんぜん違う曲調で、この曲をうたいながら枕を抱きしめているなんてけっこうご機嫌だなあとおもう。悲しい曲なんでないかと勘違いしてしまったのはキャシーがうたっているのを見た先生が泣いたからというのもあるのだけれど、作中の〈提供者〉と呼ばれる存在から臓器が切りとられていくイメージと「Never let me go」の邦訳の「わたしを離さないで」ということばのイメージがぴったりと重なるから、読んでいるほうもぐっと胸を掴まれるようなちょっぴり苦しいきもちにもなって、わたし自身が悲しくなって「Never let me go」は悲しい曲だとおもってしまったのだろう。

www.youtube.com

 ふだんからブクログに小説の引用を登録しているのだけれど、『わたしを離さないで』ではトミーの台詞を引用登録していた。〈「おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついている。必死でしがみついているんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ? 残念だよ、キャス。だっておれたちは最初から――ずっと昔から――愛し合ってたんだから。けど、最後はな……永遠に一緒ってわけにはいかん」〉。愛を証明できれば〈提供者〉の運命から逃れられるという噂が嘘だったときの肩すかしな感じと、どんなに愛しあってもさいごは〈終了〉をもって離ればなれになってしまうやるせなさは、おもいだしただけでも胸が苦しくなる。だれだって死ぬから今生の別れというのはキャシーとトミーに限らない問題のはずなのに、このふたりのことになると痛みの度合いが大きい気がする。

 もうひとつ引用登録していたのはノーフォークのはなしで、GARNET CROWの「JUDY」の〈失ってしまったものに出会うという何処か遠い遠い場所/いつかこの身が自由になるとき行こうねって話したね〉という歌いだしとやっぱりそっくりだなあとおもう(ほかにも共通点があるから、『わたしを離さないで』をもとに作詞しているのでないかとおもっている)。そういえば、「JUDY」のPVは漫画仕立てで、主人公のすきなひとが不慮の事故で死んでしまって、悲しみにくれた主人公がどこかから飛び降りようとする、けれどもそれは夢だった、というストーリーだった。

www.youtube.com

 「If I loved you」にはつづきがある。伝えたいのに怖くて恥ずかしくて言えなくて、絶好のチャンスをのがして、そうやって言えないでいるうちにあなたは昼の靄へと去っていく、わたしがどれだけあなたを愛していたか、決して知ることのないまま。『星のかけら』の真記と牧人はかなりつらい状況にあったところから救われるけれど、きっと愛がなにかを救うことってかぞえられるくらいしかなくって、だからあなたと出会えたことは奇跡なんだってうたう歌が多いのかなとか、あなたといっしょにいられなくて寂しいってうたう歌もおなじくらい多いのかなとかおもいつつ、コーラスウォーターも飲んでしまったことだし、そろそろ寝ようとおもう。

星のかけら PART(1) (講談社青い鳥文庫)

星のかけら PART(1) (講談社青い鳥文庫)

 

 

星のかけら PART(2) (講談社青い鳥文庫)

星のかけら PART(2) (講談社青い鳥文庫)

 

 

星のかけら PART(3) (講談社青い鳥文庫)

星のかけら PART(3) (講談社青い鳥文庫)

 

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 

 

メモリーズ(通常盤)

メモリーズ(通常盤)