わらびの日誌

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永田和宏『NHK短歌 新版 作歌のヒント』

今週のお題「新しく始めたいこと」

永田和宏NHK短歌 新版 作歌のヒント』

――短歌を読んで泣く日がくるなんておもっていませんでした。
NHK短歌 新版 作歌のヒント

NHK短歌 新版 作歌のヒント

 

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 年の暮れからぼちぼちと、年の明けからしっかりと、短歌をはじめることにした。母校の歌会の打ち上げが楽しそうだったから、つまりはだれかとお酒が飲みたくて。

 はじめることにした、なんて言っておいて、短歌は苦手だった。もともと詩的表現が書けないし(恥ずかしくなってしまうのだ)、例えも下手だし(とても恥ずかしくなってしまうのだ)、なにより、ひとの短歌を読んでもどう解釈すればいいのかわからなくて、短歌ってむずかしいなあとおもっていた。

 塾の宣伝文句みたいだけれど、わからなかったことがわかるようになると楽しい。永田和宏さんの『作歌のヒント』は短歌のわからないところを「わかる」に近づけてくれる。この本には短歌づくりのヒントが書かれていて、どのようにものを見ればいいか、三十一音のなかで形式がどのように作用するのか、助詞や助動詞といった一文字がどのような効果をもたらすのかといった技術的な部分も知識として勉強になるのだけれど、例としてあげられている短歌について永田さんがどう解釈しているのかを読むと、じぶんの読みかただけでは気づかなかったことに気づかされて、すとんと腑に落ちる感覚がして心地良い。「逝きし夫(つま)のバッグのなかに残りいし二つ穴あくテレフォンカード」(玉利順子「南日本新聞歌壇」)の解釈を会社で読んでいたら泣きそうになって慌てて本をとじたりもした。

 この本は“作歌の”ヒントといいながら、短歌以外の文章表現のヒントにまでなっている。形容詞は便利だけれど生の感情をあらわすことができないというのは小説で登場人物の感情を書くときにも気をつけることだし、報道の映像や写真はただの画面であって公のものではないというのはノンフィクションを書くときの情報の取捨選択につながる。〈エッセイでもおちをつけると面白くない〉というのは河野裕子さんのことばの引用だけれど、とても耳が痛い!

 

 指輪さえはめてくれればそれでいいあなたは忙しいひとだから

 

 もちろん本を読んで急に短歌が上手になるわけではないのであとは努力しだいである。