わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

ある一日(2012年7月12日ver.)

今週のお題特別編「嬉しかった言葉」〈春のブログキャンペーン ファイナル〉

 先生、お元気でしょうか。奥さまも、お子さまも、お元気でしょうか。先生のことをふっとおもいだしたのでお手紙さしあげました。

 先生は3年前の7月12日のことを覚えていますでしょうか。先生のさいごの授業があった日です。友人のオオツカさんが、わらびー、ひとにいわれていちばんうれしいこと教えて、と聞いてきました。なんで? と聞きかえしたところ、ひとにいわれていちばんうれしいこと教えてっていろんなひとに聞くのにはまってんねん、とオオツカさんはいって、そんなわけでわたしにもおなじことを質問したのでした。とっさにおもいついたのは恋人に好きといわれたらうれしい、だったのですが、なんだか恥ずかしくて言えませんでした。あのときなんと答えたのか、それともなにも答えなかったのかは覚えていません。

 オオツカさんはほかのひとにもおなじ質問をしました。先生にも、いわれていちばんうれしいことはなんですか、と聞きました。せやなあ、奥さんと子どもさん元気ですねっていわれたらうれしいかなあ、と先生はいいました。子どもを産む場面がある先生の小説を読んでいたのもあって、やっぱりそうなんやなあ、素敵やなあとおもいました。同時に、素直にいわれてうれしいことをいえなかったじぶんがさらに恥ずかしくなりました。でも、いまおなじ質問をされてもどう答えたらいいのかやはり迷うのだとおもいます。

 ところで、先生にいわれたことでひとつうれしかったことがあります。先生の授業が終わってしばらく経ったころ、そういえばさいごの課題でさ、先生がよしはらさん伸びたねってほめてはったで、と学科の副手さんが教えてくださったのです。さいごの課題は受講者全員で「ある一日」というタイトルで小説を書くというものでした。先生が日常を書いていくだけでも物語になるとおっしゃっていたので、わたしはある日のできごとを細かく書いて小説に仕立てあげていくという小説を書きました。あのころは小説を書くことに疑問を抱いていて、小説を書きたくないとまでおもっていたのですが、文章はすんなりと出てきて、小説になっていきました。あのとき、小説が完成していくこの感覚が好きなのだとおもいだしました。

 先生、わたしはあいかわらず書いています。たぶん、これからもずっと書いていきます。

 ことしは春一番が上手に吹かなくて天候が安定しないそうなので、お体にお気をつけてお過ごしください。

 どうか、お元気で。

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