わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

遥かなる旅路へ

今週のお題「卒業」

 きょうがおわったらもう劇の練習することもないし魔女の帽子かぶるんも最後なんやなあ、なんてお遊戯会の本番直前におもっているような子どもだったのに、卒園式の日はとくになにも考えていなかったし、どんな卒園式だったかも記憶にない。椅子にすわって足をぶらぶらさせていたら先生ににらまれたことはなぜだか覚えている。たしか、おねえさんはそんなことせえへんのやで、と注意されたのだった。幼稚園児は幼稚園を卒園すると小学生のおにいさん・おねえさんになる。卒園はともだちと会えなくなる悲しいできごとではなくて未来に踏みだす一歩という意味合いが大きくて、「一年生になったら」や「ドキドキドン!一年生」みたいなまえむきな歌がウィキペディアの卒業ソングのページに載るくらいポジティブなできごとなのだった(卒園式でうたったのかはわからないけれど、わたしがかよっていた幼稚園では年長さんがお遊戯会でこれらの歌をうたうという風習があった)。

 卒業ソングといえば、小学校の卒業式のときに「遥かなる旅路へ」という合唱曲をうたった。楽譜を渡されるまでこの曲の存在は知らなかったし、ネットで検索しても詳しい情報が出てこないから、たぶんマイナーな曲なのだとおもう。変イ長調のくぐもった感じとやわらかさがあわさった綺麗な音楽だった。Bメロの〈人は皆たった一人で生きていかなければならないけれど〉と〈人は皆悩み背負って歩き続けなけりゃならないけれど〉という歌詞を見て、小学生がこういうちょっと暗い歌詞うたってもええんや、と小学生ながらにびっくりした。けれど、みんなで支えあって生きていこうとか、みんなで悩みを分けあおうとかよりも現実味があるし、つよさがある歌詞ですきだ。

 いつかたった一人で生きていく日がくるのかとおもった小学校の卒業式の日は、ほとんどのともだちがおなじ中学にかようことになっていたからあまりさびしくはなかった。ただ、名木田恵子さんの『星のかけら』を何度も読んでいたせいか、まわりのひとたちが変わっていくことが恐ろしくて、これから中学生になってもじぶんだけは変わらずに生きていこうと決めた。

 捨ててしまっただろうとおもいつつ探してみたら「遥かなる旅路へ」の楽譜が出てきた。10年以上は弾いていなかったはずなのに指が覚えていたみたいで、なんとなく弾くことができた。

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