わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

永遠とゆうの、

それどこ大賞「買い物」

  夜行バスのなかで、遮光カーテンごしに向かってくる光と去っていく光を追いながら泣くのをこらえていた。livescope 2013~Terminus~の最終日にGARNET CROWが解散すると発表したのだった。たいせつなお知らせがあります、というゆりっぺのことばが耳から離れなくって、眠ることなんてできそうになくて、とても苦しかった。でも、気づいたときにはちゃんと眠っていて、降車地で乗務員に起こしてもらわないと目を覚まさなかったくらい熟睡していた。

 ライブから帰ってきてからしばらくのあいだ、小学6年生のころから毎日のように聞いていたGRANET CROWの曲を聞かなかった。なにを聞いても、CDが発売されたときにはなかったはずの悲しみがこびりついていた。代わりにギター担当のおかもっちのソロをよく聞いた。そうするしかない気がした。「Lose My Breath」とか「翼」とか「It's only love」とか「Sweet×2 Summer Rain」とか、とくにすきな曲を選んで流して、耳から体内に音楽を入れた。GARNET CROWがいない生活がどんなものなのか想像がつかなくて、解散が悲しいというよりもこれからどう生きていくのかわからない感じがしてただ戸惑っていた。3か月連続シングルリリースのときはおこづかいが足りるか心配したり、HEY!HEY!HEY!に出たときは浜ちゃんとまっちゃんに変なこと言われたらどうしようとやっぱり心配したり、恋人や大学をさしおいて、とにかく生活の中心は彼ら・彼女らだった。つくったひとたちがいなくなっても音楽は機能しつづける、という結論にいたったのはラストライブの1か月後で、ゼミの課題で書いていた小説を徹夜して完成させたときだった。ショパンドビュッシーもリストもシューベルトもバッハもベートーベンも、みんな死んでいるけれど音楽はこの世にとどまっている。それでいいのに、ときどき泣きそうになる。

 すきだったわりに、シングルベストとか、ラストソングの「バタフライ・ノット」のオルゴールとか、Blu-ray BOXとか、解散にむけて、あるいは解散後に発売されたものはほとんど買わなかった。そういうものを買わなかったのはお金がないという理由だったはずなのに、さして似合わない色味の化粧品とか、買い置きする必要のない本とか、つぎからつぎへとなにかを買った。まるで財布のなかにお金を残しておいてはいけないのだと言わんばかりに、化粧品を我慢するために本を買って、本を我慢するために漫画を買った。たぶん、趣味といえばGARNET CROWを追いかけるくらいしかなくって、それ以外のことでどうやってお金をつかったらいいのかわからなかったのだとおもう。音楽にはお金をつかわなくなった。バンドの追っかけをしているともだちが、生きてるものは追わへんことにしてん、と言っていたのはこういうことかと納得した。いつかくる終わりのときへの覚悟はもうしたくなかった。

 ときどき公式サイトを見ては、メンバーの誰かが活動していると書いてあるのを確認してよろこんだ。もう3年が経つ。いまでもいちばんすきだなとおもう。

 さいきんツイッターを見ていたら「古井弘人」という名前のアカウントを見つけて目を疑った。GARNET CROWのリーダーの、あの古井さんだ。プロフィール欄には音楽家としか書かれていなくって、ほんとうに本人なのかわからなかった。でも、ツイートを遡ると、おかもっちといっしょにポーズをとっている写真があって、これはまちがいなく古井さんだと確信した。ときどきGARNET CROWのことにふれていて、3年まえまでGARNET CROWだったことを忘れていないのだなとおもうととてもうれしくなって涙が出てきた。「バタフライ・ノット」の〈永遠とゆうの 願いを捨て去ったあとの未来を〉という歌詞があたまをよぎる。途切れたとおもっていた永遠が、細い糸ではあるけれど、またつながった気がした。

 こんなことで泣くなんておかしいとおもうのに、しばらく涙をとめられなかった。

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