わらびの日誌

please forget me not, but I'll forget you. so it goes.

ゼロ

今週のお題「印象に残っている新人」

TRIPS!①ゼロ

 ひとつしたの後輩の卒業制作の講評会に行った。いっしょに授業を受けた子も、おなじゼミの子もいたけれど、まったく顔がわからない1回生たちを見たらここはもう彼ら・彼女らの場所であってじぶんの場所ではないのだなあと寂しくなる。そのなかに、4月に入学予定のおんなのこがいた。0回生がきてるで、と事務のかたが言うので、わたしかって入学前にいろいろきてましたよ、と返した。

 大学に合格した翌月から学科主催の読書会に参加することにした。眠たいのを我慢して、よくわからないながらケルアックの『オン・ザ・ロード』を読破したのがなつかしい。読むのも遅いし、たくさん読めるほうではなかったから、毎月の読書会ですこしでも読書量を増やそうとおもっていたのだ。だから、こう、やる気に満ちあふれているときに「つぎの読書会は松山で『坊っちゃん』を読みます」なんて言われたら京都を飛びだして松山に行かざるをえないではないか! 人生初のひとり旅のはじまりである。

 はじまりである、なんておおげさに言ってみたものの、京都と松山をただ行き来しただけだった。もう5年もまえのことなのでなにかあったとしても忘れてしまっているのかもしれない。方向音痴なのですぐに迷子になって大変なことになるだろうとおもっていたのに、駅の構内図をあらかじめ覚えおいたせいかすんなりと松山にたどりついてしまった。お昼ごはんをたべて、路面電車に乗って、松山市内でもとくに迷うことなく会場に到着した。ほんとうに事件もなにも起こらなかった。もしかしたら学科の先生や先輩たちにとっては入学前の高校生が読書会を追って松山までやってきたことが事件みたいに感じられたかもしれない(実際のところ受付をやっていた先輩に、まぼろしかとおもった、と言われた)。そしてぶじに読書会に出席し、ろくに観光もしないで帰りの電車に飛びのったのだった。

 せやからあの子もぜったい卒業してからもくるわ、と事務のかたが0回生のおんなのこの将来を想像する。まだ入学もしていないのにもう卒業のはなしをするなんてなんだかおもしろいなあとおもいつつ、彼女の4年間が新入生ですらなかった0回生のころみたいにまっすぐしたものになればいいなあとおもった。そういえば、いつだったかわらびーはどんな4回生になるんかなと事務のかたに言われたことがある。けっきょくどんな4回生になったのだろう。4回生どころか大学を卒業したのに答えはわからないままだ。

 司会者がマイクをにぎった。卒業制作の講評会がはじまる。

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