わらびの日誌

Please forget me not, but I'll forget you. So it goes.

陽射しの名前

今週のお題「髪型」

 逃げ恥の新垣結衣ちゃんみたいなショートカットにした旨をある冊子に載せるエッセイに書いたのだけれど、それがとんと入稿も完成もしないうちに、だれでもない、あるいはだれでもあるショートカットになってしまった。またそろそろ切りにいかないといけないなあとおもいつつ、ずぼらなので美容院に行くのはかなり先になるとおもう。ショートカットのほうが似合うねと言われると、髪が長かったときのじぶんを否定されているような気がしてなんかとりあえず謝ってくれと叫びたくなるのだけれど、まわりの反応をみる限りショートカットのほうが似合うらしい。天然パーマの母と天然パーマの父のあいだに産まれたわたしはあたりまえのように天然パーマで、癖がでて収拾がつかなくなるから髪は長くしていたし、前髪もピンできちんととめていた。癖が出ないようにね、が合言葉だった。だからショートカットなんてしようものならとんでもないことになるのだとおもっていた。

 きょねんの春に胸くらいまであった髪を肩の上くらいまで切った。肩の下までなら切ったことがあったけれど、肩につかないくらい切ったのははじめてだった。理由はとくになくて、ただ毛先のごわつきがどうしようもなかったから切ってもらった。美容師さんにも会社のひとたちにも言われはしなかったけれど、「ばっさりですね」とか「えらい切ったんやな」ということばのまえにすこし間があって、失恋でもしたんやろうかとおもわれていたんじゃないかとおもう。失恋で髪型を変えるなんて小学生のころの兄くらいである。小学4年生のとき、すきなおんなのこにすっぱり振られて坊主頭にしたのだった。当時は共同の勉強部屋だったわたしの自室の壁にはすきだったおんなのこの名前がとてもちいさな字で書きこまれていて、何時何分にここに陽射しがあたって名前が見えるようになるなどよくわからないことを言っていた。別に陽射しがあたっていなくてもその文字は読みとれるのだ。それから10年以上経って、大学4回生の兄に「告白ってどうやってするん?」と聞かれたときにはどうしたものかとあたまをかかえた。わたしもいい時期ではなかったから答えようがなくて「知らん」としか言えなかった。

 現在、兄は坊主頭である。高校生のころから禿げてきていたのがだいぶ広がってきたので目立たないようにするためにぜんぶ剃ってしまったのだった。坊主頭に着物をきているのを見ると、似合ってはいるのだけれどやはり現代人っぽくなくって、このひとを好くおんなのひとがいるんだろうかとすこし不安になる。とても26歳にはみえない。おまけに将棋をさす。ネット対戦かゲームかで将棋をしていて、なんでやねんという悲鳴が兄の部屋からよく聞こえてくる。兄が将棋をすきになったきっかけはまったく知らないけれど、『3月のライオン』の穴熊から玉がすぐに出てきてしまうくだりでくすくす笑っていたから、ああ将棋がすきなのだなとおもう。けれども香子が登場するシーンで笑えないとか怖いとか言うから、やっぱり恋愛には強くないらしかった。

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